水の酸素・水素安定同位体比分析技術解説

水の安定同位体比検査・・新たな分析方式による測定

CIMG1287.JPG水の酸素・水素安定同位体比の測定は、IRMSにおいては、酸素、水素それぞれにおいて前処理が必要です。 酸素安定同位体比では、二酸化炭素との交換平衡状態にした後、二酸化炭素の安定同位体比を測定します。 この処理には、水平衡装置が使用されています。
一方、近赤外線レーザーによる新方式の分析装置の場合、高い測定精度を有しながら、水平衡装置は不要となり、高い効率での分析検査が可能となります。
この装置による測定では以下のような特徴が挙げられます。
(PICARRO社 WS-CRDS方式水安定同位体比アナライザーは、三洋貿易株式会社が取り扱っています。)

WS-CRDS方式PICARRO水安定同位体比アナライザーの特徴
δ¹⁸O、δDの同時測定
高精度(δ¹⁸O < 0.1‰、δD < 0.5‰)の保証精度
メモリー効果が最小限
堅牢で環境変化に強い(野外測定可能)

日本同位体分析研究所は、この水安定同位体比アナライザーのアプリケーション開発を行っています。

水酸素・水素安定同位体比測定

waterd18OdD.gifクリックで拡大実際のミネラルウオーターの測定例を示します。測定は、市販のミネラルウオーターより分析用サンプルを採取し、各10回分析による測定結果です。 分析の偏差も少なく、高い精度での分析結果が得られています。 またSea Waterサンプルとしては、市販の海洋深層水を測定したものです。 海水は、酸素・水素安定同位体比の標準となるものであり、標準海水でd18O 0, dD 0ですから、測定として非常に良好な結果が得られている事が示されています。測定自体は、1回分析に約10分、1検体10回分析で約1時間半程度です。 
この装置を製造しているPICARRO社は、米国スタンフォード大学の研究者により創設され、WS-CRDS(波長スキャンCRDS)による微量ガスや安定同位体比分析装置を製造しています。 国内では、水分析用途に独立行政法人海洋研究開発機構にも導入されています。 海洋水や環境水、さらには空気中の二酸化炭素の測定など環境分野においては、国際的にも多くの導入実績を有しています。
日本同位体分析研究所においては、安定同位体比データの標準サンプル採取の過程で同時に採取される環境水の分析の他、現在食品用途での分析検査へのアプリケーションを開発しています。

農業用水、河川水の水安定同位体比の測定に威力を発揮。 採取から分析まで、高精度・迅速性を発揮

農業生産の為に、国内にすみずみまで張り巡らされた農業用水の安定同位体比の研究調査に威力を発揮。 新潟・長野全域で総計350箇所を越える農業用水、河川水の水安定同位体比を測定。 米の収穫期に併せて実施された、非常に短期間に多数のサンプルを採取・分析するという課題に、高精度・迅速分析で対応。 生産地域別の農業用水の安定同位体比の特徴をみごとに描き出しました。 水の酸素・水素安定同位体比の測定は、極めて容易に安定同位体比の変動が発生する為、非常に注意が必要です。 酸素・水素安定同位体比を迅速計測可能な、WS-CRDS方式水安定同位体比アナライザーは、膨大なサンプルを迅速に分析処理しました。 水平衡装置が不要な為、野外での水採取から測定まで、非常に短時間、かつ安定した分析能力を示し、農業生産体系の要となる農業用水の酸素・水素安定同位体比の生産地域別の特徴を見事に描き出しました。 新潟、長野全域にわたる野外農業用水・河川水安定同位体比研究調査を支えたのは、ピカロ社WS-CRDS方式水安定同位体比アナライザーでした。

WS-CRDS方式水安定同位体比アナライザーのアプリケーション開発

食品の産地判別を含む、各種分析検査へのアプリケーション開発

image001.png測定値グラフと近似線CIMG1291.JPG水測定画面日本同位体分析研究所において測定した市販ミネラルウオーターの酸素・水素安定同位体比測定値に基づいて近似線を求めるとy-7.3876x + 10.817という近似線が得られ、良好な分析結果が示されました。 実際の分析モニター画面には、リアルタイムでの測定値が表示されています。
日本同位体分析研究所は、この装置を水安定同位体比分析に用いている他、現在全国規模で継続している各種農産物、林産物、水産・畜産物の採取と並行して、各地の環境水の採取を行っており、この装置による分析データを蓄積しています。